Interview

世界の信用市場へ投資を橋渡しするクラウドクレジットのプラットフォーム戦略

クラウドクレジット株式会社 杉山智行 × Longine FinTech取材班

今回はクラウドクレジット株式会社の杉山智行 代表取締役に同社の事業内容やその競争優位性、今後の事業展開についてお伺いしました。

読者に伝えたい3つのポイント

クラウドクレジットはカネ余りの日本の投資家にカネ不足の国の個人向けローン、中小事業者ローンなどの投資機会を提供しています。

担保志向の強い投資家に対し、投資期間の短期化と担保化を進めて投資商品の品揃えを広げています。

今後は世界のさまざまな地域の信用商品を分析するプラットフォームを目指します。

資本余剰国と資本輸入国をクラウドファンディングで結びつける

Longine FinTech取材班(以下、Longine): 投資型クラウドファンディングの会社を起業した想いを初めに教えてください。

クラウドクレジット株式会社 杉山智行 代表取締役(以下、杉山):私が当社を設立した際の着眼点は、お金の流れをマクロで見て、クロスボーダーでアービトラージの機会を狙うというものでした。イギリスの銀行に勤務した経験から、イギリスのように構造的に資金が足りない国と、日本のようにカネ余りの国を結びつけると投資機会が広がると考えました。韓国やオーストラリアのお金の流れもイギリスに似ています。マクロ的なアービトラージですから、瞬時に裁定機会が失われるわけではなく、裁定機会の収束には時間がかかります。こういった投資機会を投資家の方に提供することで事業としても成長させることができ、また社会的意義もあると考えました。

Longine:ビジョン先行型ですね。

杉山:最初は銀行を作ろうと思いましたが、それはなかなか難しいため、投資型クラウドファンディングという仕組みで事業化しようと決めました。

「短期化」[担保化]で個人投資家のニーズをとらえる

Longine: 起業後、どんな展開になったのですか。

杉山: 現在はフィンランドの個人向けローンやペルーの不良債権に小口分散投資を行う商品を提供しています。たとえばフィンランドでは個人向けローンの金利が高いため、デフォルトを差し引いても12~13%のリターンを出すことを目指しています。一方で個人投資家の方は、小口分散していても無担保の商品よりも担保付のものを選好されます。これは銀行が担保を要求することと同じです。「銀行は担保がないと貸さない」、「途上国のマイクロファイナンス機関の金利は高すぎる」という意見がありますが、実際に自分がリスクをとる当事者になると、金融機関の気持ちがわかるということかと思います。

Longine: ではどう対応しているのでしょうか。

杉山:商品の投資期間の短期化、担保付き案件の組成を進めています。例えば欧州の個人向けローンの期間は3年を中心に2年から5年というのが市場ではポピュラーなのですが、それでは現在の日本の個人投資家の方向けにはやや期間が長いと思います。6か月から2年という期間の商品が日本の個人投資家の方には一番人気があります。そこで従来期間3年の商品がメインだった中で期間が2年の商品を投入し、現在は期間が7か月から2年くらいの商品を中心に組成していく方針です。

Longine:担保化の方はいかがですか。

杉山: 2月以降、担保付の案件も積極的に投入していく予定です。昨年末から組成を進めているのが、例えば、途上国と先進国の中間にあるラトビアやリトアニアのオートローンです。円とユーロの金利差も最近なくなり、期間2年、担保付で8%程度の利回りが円建てで出ます。

自動車担保以外には、インボイス取引があります。インボイス取引では1か月から3か月の期間で回収を行うので、ファンド内で何度か再投資して、仕上がりとして期間7~8か月で6%程度のリターンが出るように組成していきます。

また最近ではカメルーンのトレードファイナンスの案件を手掛け始めています。タイヤやガラス器具などの輸入業者に対して、在庫自体を動産担保として7か月程度の期間の貸出しをする形態になります。カメルーンは信用格付けがシングルBでカントリーリスクがありますが、リーマンショックの時にカメルーンのトレードファイナンス取引のデフォルト率は特に上昇していません。提携業者はトラックレコードがまだ少ないですが、いまのところ非常に良い運用を行っています。しかも動産担保付です。資産運用で大切なリスク分散を図るにあたり、世界経済の動向にパフォーマンスが左右されやすい株式等と相関がほとんどない商品への投資は大切だと思っています。ですので、リスクの所在地を説明して買っていただけるようにしていきたいと思います。

クラウドクレジット株式会社 杉山智行 代表取締役

クラウドクレジット株式会社 杉山智行 代表取締役

案件発掘の実際

Longine: 案件獲得の競争状況はどうですか。

杉山: 国によって異なります。例えば、リトアニアではドイツの個人投資家が多数投資を行っているらしいですが、法人は我々が初めてのようです。我々の攻める地域はまだまだ広いと思います。

資金が不足する国では、銀行だけでなく国内の投資家の資金に頼るソーシャルレンディングも発達しません。そういう国であれば、我々が結び付け屋として、先方からは「どんどんお金が届くなんてうまい話があるのか?」、日本の投資家には「そんな金利が高いってうまい話があるのか?」となるような状況を、まだまだ作れると確信しています。

ただし、参入の難しい国もいくつかあります。アメリカは入りづらいです。ピア・ツー・ピア(P2P)の80%が年金とヘッジファンドで、最低でもワンショット10億円単位での投資が常識で、現在の我々には難しいです。ヨーロッパの上位5か国はヘッジファンドが列をなしていて似たような状況です。ドイツやオランダなどは資金が豊富な国なので、「それほど海外からの投資が必要とは感じない」と言われることが何度かありました。

Longine: 欧州以外に注目する国や地域はどこですか。

杉山: 南米の西海岸、チリ、ペルー、コロンビア、メキシコは面白いですね。この15年間マクロ経済が安定し、政府が無駄遣いもしていません。例えば、ペルーは昨年経常収支と政府収支の双子の赤字になったのですが、実は政府収支が赤字になったのは過去13年でまだ2回目です。残りの11年間にストックが貯まっているし、外貨準備もあります。現在の世界経済の状況の中でペルーの中央銀行は利上げを行っていますが、政府が財政出動をセットでやっています。これはマクロ経済の頑健さの表れの1つです。私もペルー経済にまだまだ勢いがあることを実際に現地で肌で感じることができました。

Longine: 現地に行くとまた発見があるんですね。

杉山: そうです。私は銀行で複雑な金融商品の価値を計測する金融工学系の仕事をしていました。ですので、ついつい金融商品の時価評価や市場での流動性に目が行ってしまいがちなのですが、実のところ投資というのは流動性がほぼなくても成立すると考えるようになりました。中途半端な市場流動性があると、リーマンショックのような局面では全員が同じ方向でリスクを減らそうとして、それによって市場が自己実現的に崩壊することがありますが、流通市場がない商品は満期まで持ち切るしかありません。

要は、最初から持ち切るしかないことが前提でもよい方だけに投資していただく。満期までにいろいろな経済事象が起きてドキドキしますが、他の投資家の行動で値段が動くのではなく本源的なクレジットリスクに集中して投資いただくのも選択肢の1つとしてありではないでしょうか。

デフォルトは前提条件

Longine:デフォルトは結構あるのですか。

杉山: 例えば、今、エストニアの上限金利は70%、フィンランドは50%です。そこで70%、50%で借りている人に対して、60%、40%でオファーして借り換えをしてもらいます。金利60%の貸金は40%ぐらい貸し倒れるので残りの20%を取りましょうという考え方ですね。

もう1つ大切なことは、デフォルト時の回収についてです。暴力的な回収はどの国でも問題になっています。当社が提携しているサービサーには暴力的ではなく、途上国の金融リテラシーが高くない債務者に対して基礎的な部分を教育しながら回収をしている先があります。電話で「家族、親族から借りられませんか?」「お給料からこういう天引きっていう方法がありますよ」と教えてあげながら回収しています。

投資家開拓の勘所

Longine:投資家の集め方はどうされていますか。

杉山: 商品の性格もありますので、既存の金融系メディアに取り上げてもらうことで認知いただくことが多かったです。ウェブでの広告等はなかなかはまりませんでした。いきなり「ペルーの不良債権」といっても、なかなか難しい。

現在の我々の顧客はシニア層ではなく、よりネットと親和性の高い30代、40代の方がメインです。ネット証券で取引経験のある方が多いですね。

ハイリスク・ハイリターンからミドルリスク・ミドルリターンへ商品展開する

Longine: 今後の品揃えはどうなりますか。

杉山: これまでの経緯を整理すると、初めはペルーの不良債権への投資を重点的に手掛け、その後エストニア、フィンランド、スペインの3か国の個人向けローンのファンドを組みました。そして最近フィンランドに特化した個人向けローンのファンドを手掛けています。

今後は、先ほど触れたカメルーンの中小事業者向けローンファンド、東欧やメキシコの個人向けローンを予定しています。個人向けローン、中小事業者ローン、不良債権ローンの3本立てにし、できれば海外の不動産担保ローンも混ぜていきたいです。そして現在の商品よりリスクの低い、ミドルリスク・ミドルリターンの商品も投入していきたいと思います。

クラウドファンディングの未来は4極体制へ

Longine: 杉山さんはクラウドファンディングの将来像をどう考えていますか。

杉山:ソーシャルレンディングは、ただの貸金ファンドです。これが近年になって注目を浴びる背景は、リーマンショックを経てバーゼル規制の強化が進む中で、銀行がもはや手掛けることができなくなったリスクが比較的高いセクターにリスクマネーを供給する役割を期待されているからです。

イギリスは中央銀行、財務省と金融庁が三位一体となって、ソーシャルレンディングを支援する動きをとっています。元本保証の預金を集めて安全な貸付をする銀行と、比較的リスクの高い先に融資するソーシャルレンディングという2本柱で社会にお金を回していくことを考えているようですね。

ソーシャルレンディングの市場規模は2025年までに残高で100兆円になるという予想があります。この波にうまく乗りたいと思っています。

しかし、欧米と日本の事情の違いは踏まえておく必要があります。イギリスは銀行が資金不足で銀行の貸出先に限界があります。一方、米国は移民の国ですから、銀行にアクセスのない低所得の人が多数いる。これらと比較すると日本の銀行はある意味、社会の隅々にまで貸しているとも言えます。その結果、当社以外のソーシャルレンディングの会社を見るとほぼ全社、不動産担保ローンを中心として商品の提供を行っています。中小事業者、個人に貸し付けるのではなく、基本的には不動産事業に貸し付けています。日本では日本の特性に合わせた事業展開が必要だと思います。

Longine: ソーシャルレンディングの市場はまだまだ若いですね。

杉山:ソーシャルレンディングは、業界としてリーマンショックのような金融危機を経験していません。一度クラッシュを経験し、ロスがどの程度のものかが理屈ではなく可視化され、投資家の方に「ダウンサイドでもこの程度のものなのか」と思っていただくことができれば、その後の市場の成長は一層加速すると思っています。実際にどの事業者も金融ショックに備えた商品の組成を行う試行錯誤をしているように見えます。

Longine: ビッグデータとソーシャルレンディングとの関わり合いはどうなるのでしょうか。

杉山: どんどん密になっています。ソーシャルレンディングの生態系では、プレーヤーの役割の4極化が進んでいます。従来の、集客を行う業者、審査/回収を行う業者(オリジネーター)に加えて、ビッグデータを使った審査モデルを作りオリジネーターに提供するプレーヤーが第3極として台頭してきています。また市場が大きくなってくると、ネット証券や中小の証券会社が集客に参入してくると考えており、スタートアップ企業の付加価値は第4極として、オリジネーターの業務遂行能力やビッグデータを用いた審査モデルの評価を行う分析機能に移っていくと考えています。

Longine: クラウドクレジットの方向性はどうなりますか。

杉山: どの国のどういうオリジネーターの審査/回収を行うオペレーションが優れているか、また国ごとにワークする審査モデルは全く異なるので、ある国ではどういう審査モデルがワークするのか、データを蓄えて分析プラットフォーム化していくのも1つの方向性かと考えています。

もう1つ、国内の中小事業者の方や海外の富裕層から資金を集める体制作りを進めていきたいと考えています。

Longine: 今日はどうもありがとうございました。

杉山: こちらこそ、どうもありがとうございました。