Interview

MoneySmartはユーザー目線のUIでお金の身近な問題を楽しく解決する

MoneySmart株式会社 代表取締役CEO 大宮聡之 × Longine FinTech取材班

今回はMoneySmart株式会社の大宮聡之CEOに、同社の展開する家計簿をベースにした個人資産管理アプリ「MoneySmart」などのサービス群と、今後の事業展開についてお伺いしました。

読者に伝えたい3つのポイント

MoneySmart株式会社は、すべての人が金融に興味を持ち、お金の身近な問題を解決できるような金融サービスを提供するというミッションのもとに設立されました。

現在、個人資産管理アプリであるMoneySmartとMoneyTron+などを中心に、若い方が楽しく使え、しかも役に立つアプリを展開しています。

今後は、親御さんがお子さんのお金と居場所の見守りを支援するomamoriサービス、交通系ICカードの使い勝手を改善し、PFM(Personal Financial Management)に連携するサービスを展開していきます。

MoneySmart創業の想い

Longine FinTech取材班(以下、Longine):Fintechのスタートアップには金融のバックグラウンドがある方が起業するケースが多いと思いますが、大宮さんのバックグラウンドはデザインです。まずは創業の経緯を教えてください。

MoneySmart株式会社 大宮聡之CEO(以下、大宮):金融出身でないFintechの起業家は確かに少ないですね。私がこの事業を始めた動機は、これまでの金融サービスが算数のできる一部の人たちばかりに利用されているのではないかという問題意識です。

家計簿をつけることも、株やFXの取引をすることも、しっかり興味や目的意識がないと手が出ない領域、ある意味で敷居の高い領域だと思われています。それは、そもそもおかしいのではないでしょうか。すべての人に金融について興味を持ってもらって、お金の身近な問題を解決できるような金融サービスを提供する、これが私の起業のコンセプトです。

Longine:大宮さんの経歴を少し教えていただけますでしょうか。

大宮:私はもともとグラフィックデザイナーで、師匠が音楽系だったこともありCDジャケットのデザインなどを手掛けていました。インターネットが登場してからは、アーティストのWEBサイトなども作ってきました。

Longine:それは素晴らしいですね。その後、音楽系からなぜご関心が変化したのでしょうか。

大宮:ちょうどiPhoneが出た頃から意識が変わりました。それまでは「カッコイイこと」が価値だと思っていたのですが、実は自分の天職はユーザーインタフェース(以下、UI)や人が手に取るプロダクトのデザインだと気づいたのです。そこで、優れたUIを備えたアプリのデザインに仕事をシフトしました。同時にHuman Centered Designという考え方も真剣に学びました。個人としてエポックメーキングだったのは、とある有名な地図アプリの設計とデザインを手がけた時です。いろいろな知見を開発チームのメンバーと共有しながら開発し、実際に多くのユーザーに利用されて手ごたえを感じました。

UIに優れたお小遣い帳アプリをリリース

Longine:では、金融関連のアプリに進んだ経緯はいかがだったのでしょうか。

大宮:ある時、開発会社の方々と「最近財布の中身の減り方が早い。イケてる金融系のアプリも少ないし、せめて財布の入出金をトラックするアプリを自前で作ってみてはどうか」という話になりました。2010年のことでしたが、これが現在のMoneySmartの原型になりました。デザインを私が手掛け、開発はその開発会社が行いました。簡単な入力、楽しく自然な操作、美しいUIを追求したお小遣い帳アプリとしてリリースしました。

Longine:顧客の反応はいかがでしたか?

大宮:おかげさまでヒットしました。アップルでは、日本のファイナンスのアプリで1位になりましたし、日本全体のアプリでも10位以内に入りました。さらに、米国でもファイナンスでトップを取りました。成功要因としては、まずはカッコよさ、そして説明書なしでも直感的に操作ができるように工夫したことだと思います。

Longine:その後、どう展開されたのですか。

大宮:2012年に割り勘アプリ「SpliTron(スプリットロン)」をリリースしました。これは、各種の条件を入れると割り勘の計算が簡単にでき、さらに誰が支払いを済ませたのか記録できるアプリです。決済は現金で行います。割り勘アプリには無料のものが多いのですが、スマートなアプリを使いたい方向けに有料で提供し、市場の支持を得ました。

その後、2014年7月にNTTドコモが実施しているドコモ・イノベーションビレッジのアクセラレーションプログラム第3期に参加しました。ここではお小遣い帳アプリのMoneyTronをさらに進化させるため、機能の強化・追加を行い、11月のドコモ・ベンチャーズ第3回デモデイで「イノベ―ティブライフデザイン賞」をいただきました。MoneySmartを創業したのは、同じ2014年の8月です。

若い人向けのPFM(Personal Financial Management)にまずフォーカス

Longine:現在注力している事業について教えてください。

大宮:さまざまな事業を進めていますが、自社製品は現在MoneySmart、MoneyTron+、SpliTronです。その中で、PFM(Personal Financial Management)を主軸に据えています。

いわゆる「家計簿アプリ」というと、それだけで敬遠する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちは誰にでも簡単に楽しくお金の管理をしていただきたいと考えていますので、この部分に非常に気を配ってPFM向けのアプリを制作・提供しています。

PFMの領域は棲み分けが進んでいます。学生から社会人になってクレジットカードなどを使うようになった方にはMoneytreeさん、お金が貯まり資産管理が必要になった方向けにはMoney Forwardさん、主婦として家計簿を管理する方にはZaimさん、あるいは少し異なるジャンルになりますが、Dr.Walletさんもいらっしゃいます。その中で、私たちは現金管理を必要とする学生さんを第一のターゲットにしています。

Longine:面白いですね。UIやUX(ユーザーエクスペリエンス)については、さらにどのような工夫をされているのでしょうか。

大宮:一般に家計簿というと費目ごとに管理する、たとえば電気代がいくらだったのかを入力することが重視されてきました。しかし、私たちはお金の管理の目的はそこではないと思うのです。

MoneySmartアプリを製作する時に、私たちはお金の使い道がどのように自分のクオリティオブライフに関わっているのかをしっかり確認できてこそ意味があると思い、その機能を作り込みました。無駄遣い・生き金のチェック機能や、誰のために使ったのかがすぐにわかる機能、どこでどれだけ使ったのかがわかる支払先マップなどが具体例になります。こうした見える化によって新しい発見があり、ユーザー体験としても面白いと思います。ここにこそ金融機関ではなく、デザイナー目線の金融アプリの強みがあると思います。

「モノ」ではなくて「コトのPFMを作りたい」というのがミッションで、まだ途上ではありますが、一般的な家計簿アプリよりも定着率が高いというデータもあり、ユーザーの方にご評価いただいていると喜んでいます。これからも、さらに良いものを練り上げていきたいと考えています。

MoneySmartアプリの使用イメージ(画像提供:MoneySmart)
MoneySmartアプリの使用イメージ(画像提供:MoneySmart)

若い人のお金の管理サービスをさらに深掘りする

Longine:その先の展開はどうなりますか。

大宮:昨年秋に参加したNRIハッカソン@CEATEC JAPAN2015では、“Money×IoT”というテーマのもとに、交通系ICカードの残高を常に手元でチェックできるような、ポータブルなデバイスとソフトを開発しました。具体的には、改札を通ったと同時にICカードの残高がiPhoneやAppleWatchに通知されるような仕組みです。これは、おかげさまで東京海上日動システムズ賞を受賞しました。この案件をさらに進めていきたいと思います。PFMにも連動させていきたいですね。

また、このシステムを活用して、私たちは「omamori」と名付けた、お子さんの居場所とお金を見守るサービスも展開していく予定です。お子さんのお小遣いの管理を自動化し、スマホを介して親子でシェアすることでお金について親子で考える金融教育の機会を創出します。と同時に通過型の居場所見守りが利用ができるサービスになります。

私たちは、まず若い人たちに楽しくお金の管理に親しんでいただきたいと考えています。

Longine:本日は貴重なお話をいただき、どうもありがとうございました。

大宮:こちらこそありがとうございました。