Interview

Warranteeは保証書の電子化で資産管理のパラダイムシフトを目指す

株式会社Warrantee 代表取締役 庄野裕介 × Longine Fintech取材班

今回は、株式会社Warranteeの庄野裕介代表取締役に、保証書を電子化するビジネスの今後の狙いについて伺いました。

読者に伝えたい3つのポイント

株式会社Warranteeは「保証書の電子化」を軸に2013年秋に創業されました。

2016年6月に賃貸住宅の備え付け設備や入居者の家電の修理保証サービスを開始し、法人向けの資産管理ツールとしての展開を考えています。

保有製品の情報(誰が、いつ買った)を把握していることから、各メーカーや関係省庁と協力してCRMやリコール情報の配信などでの活用も進めています。

シリコンバレーで保証書を電子化するビジネスモデルの原型を構築

Longine Fintech取材班(以下、Longine):まずは、起業のきっかけを教えてください。

株式会社Warrantee 庄野裕介代表取締役(以下、庄野):大学4年生の時、ある企業から内定をいただいていたのですが、就職する前にITの聖地であるシリコンバレーを見ておきたいということで、大阪市が主催するシリコンバレーツアーに参加しました。ビジネスコンテストで優勝したらタダで行ける、というツアーではなく、私の場合は自腹で行きました。

とはいえ、単なる卒業旅行ではなく、現地のベンチャーキャピタリストに対して英語で起業プランをピッチすることが参加条件となっていました。そこでの経験が、現在のビジネスの原型になっています。

Longine:ピッチの準備にはどれぐらいの時間がかかりましたか。

庄野:約3分です。

Longine:非常に短いですね(笑)。

庄野:アイデアは既にできあがっていたからです。もともと私は東京出身でして、関西にある大学に通うために初めて一人暮らしを始めました。その際に、幸か不幸か、何度も家電製品が壊れて修理に大変な思いをしたという経験がありました。それで、保証書を電子化したいというアイデアを以前から温めていたからです。

Longine:ピッチは成功したのですか。

庄野:そのツアーで選ばれて出資してもらったということではありませんが、シリコンバレーのVCのメンターの方々には、とても有益なアドバイスをいただけました。

日本では一般的に減点方式の場合が多く、問題点を指摘されて終わってしまいがちですが、アメリカですと、こうしたら儲かるよ、といった加点方式で様々な観点からアドバイスを得ることができました。それで、短期間のアメリカ滞在中に今のビジネスモデルの原型が固まったのです。

保証書の保存から中古買い取り、廃棄までを1つのアプリ上で実現するサービス

Longine:大学卒業後、半年の準備期間を経て2013年秋に起業されたということですが、現在のビジネスの内容を教えていただけますか。

庄野:弊社では、保証書をスマホで電子化して管理するサービスから事業を開始しました。クラウド名刺管理の「Sansan」とか、家計簿アプリの「マネーフォワード」と同じように、スマホで文書をスキャンし、OCR機能でテキストデータ化する仕組みを取り入れています。

Longine:スマホとクラウド技術がこれだけ普及したから実現できたサービスですね。このアプリを使えば、紙の保証書はいらなくなるのですか。

庄野:スマホのカメラで保証書あるいは製品のバーコードを撮影して弊社に送っていただければ、データはクラウドに保存しますので、紙の保証書を保管しておく必要はなくなります。そのデータを元に、将来、製品が故障した場合、ウェブやアプリから簡単に修理依頼を出すことができます。

Longine:メーカーの製品登録サイトとの違いはどこにありますか。

庄野:何といっても使いやすさです。メーカーの製品登録サイトはウェブベースのものが多く、各社ばらばらのフォーマットに名前や住所、型番などを手打ちする必要があります。ユーザーも、故障のたびに山ほどある紙の保証書の中かから探し出さなくてはいけないなど、何かと面倒です。そのため、メーカーさんの話ですと、登録率は1%ぐらいと非常に低いとのことでした。

一方、弊社のアプリですと、Facebookログイン機能を使えば名前、住所等の入力は不要です。また、製品情報は、レシートを撮影するだけで入力が完了します。保証書の管理、製品説明書の閲覧、中古売却査定、修理依頼などをスマホだけで一元管理することができるのです。

Longine:故障した場合は、具体的にはどうすればよいのですか。

庄野:アプリ内に「修理ボタン」がありますので、それをクリックしていただくと、弊社が修理の手配などを行います。

Longine:廃棄についてはいかがですか。

庄野:廃棄については、経済産業省(以下、経産省)の方で、リサイクルにもこのアプリを活用できないかを検討していただいています。家電4品目(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)については、家電リサイクル券というのを購入する必要があるなど、非常に手間と時間がかかります。そのことが、リサイクル率が上がらず不法投棄が減らないことの原因になっていますので、経産省とともに、使いやすい廃棄の仕組みを作り上げたいと考えています。

Longine:なるほど。このアプリは消費や社会の仕組みを大きく変えるポテンシャルを秘めていますね。

庄野:ユーザーが保有している製品の情報を把握していることを活かし、各メーカーや関係省庁と協力して、リコール情報の配信やメーカーの製品開発・マーケティングにお役立ていただきたいと考えています。

また、この仕組みを使えば、メーカーが販売した製品が今どこにあり、誰が持っているのかを把握できるので、給湯機や電気食器洗機、浴室用電気乾燥機といった「長期使用製品」のアフターサービスにも活用が可能です。

Longine:古くなった暖房機や給湯器での事故が社会問題になっていますね。

庄野:たとえば携帯電話を誰が所有しているかを把握できていなくても、メーカーとしてはそれほど深刻な問題ではありませんが、給湯器などではリコール製品に事故があった場合、人命に関わるような大問題にもなり得ます。このため、経済産業省は、「長期使用製品」については“誰が何を持っているのか”を把握するようにメーカーに対して指導をしています。

株式会社Warrantee 庄野裕介 代表取締役
株式会社Warrantee 庄野裕介 代表取締役

インダストリー4.0時代に向けてメーカーとユーザーの間をつなぐ

Longine:このアプリはCRMにも活用が可能ですね。

庄野:CRMについては、メーカーの販売部門だけではなく、開発やマーケティング部門も非常に関心を持っています。マーケットが望んでいるものを作ろうとしても、ユーザーが実際に何を求めているのかが分からないという悩みがあるためです。

Longine:消費者の嗜好性やライフスタイルは益々多様化していますので悩みは深まるばかりでしょうね。

庄野:今は、世間で流行っているからではなく、「私」が欲しいものを作って欲しい、そうではければ絶対に買わない、という時代になっています。

弊社としては、個々人の趣味嗜好を含めて、持っているものの把握からデータを取得していこうとしています。また、スマホアプリなので、ユーザーに対して直接アンケートを取ることも可能です。実際に「次の新製品開発にあなたの意見が活かされますから意見をください」とお願いすると、大量のフィードバックを得ることができるんです。

Longine:まさにインダストリー4.0時代のメーカーとユーザーの関係ですね。

庄野:大量生産の時代から、3Dプリンターでのモノづくりのように、ユーザーの意見を反映させ、カスタマイズされた製品の生産が可能な時代になってきています。そういう意味で、このサービスの需要はあるのかな、と考えています。

“ファイナンス × IT”で消費の形態を変える

Longine:ところで、このビジネスではどのようにマネタイズを行っていくお考えですか。

庄野:弊社のビジネスモデルはB2B2Cですが、弊社は真ん中のBで、これまでは左端のB向けを中心に事業基盤を整えることに注力してきました。

Longine:不動産情報会社の「アットホーム」とも提携されていますね。

庄野:賃貸物件ですと、給湯器やエアコンなどの住設機器が付いているのですが、入居者からすると壊れた時にどこに電話すればよいかが分からないなど、住設機器の管理が課題になっています。たとえば、ワンルームマンションなどではエアコンは全室同じメーカーということが一般的ですので、弊社のサービスをお使いいただくことで、それを一括して登録し管理することができます。

C向けには課金をしていませんので、このような形で提携している事業会社さんからいただくシステム使用料が現状の主な収入源です。今後は、家電メーカーにこの仕組みを販売促進ツールとして活用してもらうことも考えています。

Longine:買い替え時期が近付いてきた顧客に効率的にアプローチできるようになるので、ニーズは大きそうですね。

庄野:そうですね。とはいえ、このような仕組みは他にも既にありますが、実際には購買に結びついていないという現実もあります。その1つの理由に、買いたくてもお金がないことがあります。この問題を解消するために、弊社としてはファイナンスの分野にも取り組みたいと考えています。

たとえば、高いものを買いやすいような分割払いとか、カード会社と組む場合にはリボ払いなどをデフォルトで使えるようにすることです。

Longine:ようやくフィンテックらしいテーマになってきました。

庄野:現状では、取引が成立した場合の成功報酬モデルを考えています。また、最初は特定の金融機関と組んでサービス提供するつもりですが、その先は、いくつかの金融機関のスキームをユーザーが選択できる仕組みも取り入れたいと考えています。

さらに、金融関連ということで言えば、保険分野についても考えています。たとえば、クルマですと自動車保険、家ですと火災保険などがありますが、これらを電子化して弊社が管理し、保険の更新時期などを把握することで、様々なビジネス展開が可能だと思います。

Longine:最後にフィンテックについてのお考えを教えてください。

庄野:弊社は今後、ファイナンスを軸に事業展開を考えており、そこはまだまだブルーオーシャンだと思っています。割賦販売の仕組みを使うことで、従来は学生には手が届かなかった高額製品、たとえばスマホの購入が容易になったようなことを他の家電製品などにも広げられたら、と考えています。

そのためには、煩雑な事務手続きの簡素化や、割賦料率の引き下げなどが課題となると思いますが、ファイナンスにITを掛け合わせることで、この目標に挑戦していきたいと考えています。

Longine:本日は、お忙しいところどうもありがとうございました。

庄野:こちらこそ、ありがとうございました。