Interview

お金の新しいカルチャーを世界で普及させるFinatextが目指すモバイル金融

株式会社Finatext 林良太× Longine FinTech取材班

今回は株式会社Finatextの林良太 代表取締役に同社の事業内容や成長戦略についてお伺いしました。

読者に伝えたい3つのポイント

Finatextはリテール市場の金融リテラシーを底上げし、投資活動に革命を起こすことをミッションに、個人向けモバイル金融分野での成長を目指しています。

現在、株コミュニティアプリ「あすかぶ!」、FXアプリ「かるFX」、投資信託の選択サポートアプリ「Fundect」などを展開中。いずれも、ゲーム性を持たせ面白さを追求していることやSNS機能を持つことが特色で、開発速度とSNS運営ノウハウが競争力の源泉です。

すでに株、FX、投信の分野でサービスを展開していますが、将来的には不動産、保険分野を始めとしてその他の分野への参入も検討中です。

大手金融情報ベンダーに勝つために選んだ戦略とは

Longine FinTech取材班(以下、Longine): 株コミュニティアプリ「あすかぶ!」や、FXアプリ「かるFX」が急速に伸びていますが、創業から今までの経緯を教えてください。

株式会社Finatext林良太代表取締役(以下、林): 2014年に創業しましたが、スタートはiPhoneアプリ「Stocky」というImplied Volatility Curveで株価を予測するツールでした。かなり気合を入れて作ったのですが、全くユーザーには刺さらず、スケールアップしませんでした。

そこで分かったのは、真面目なことや難しいことをやっても大手金融情報ベンダーには勝てないな、ということでした。「Stocky」では、対象としているユーザーが機能ベースに購買することや、そもそも使いこなせる人が限られているため、アップサイドが期待しにくいという結論に至りました。

そこで心機一転、市場が大きい投資初心者向けのサービスに方向転換し、色々と考えた結果「あすかぶ!」を始めました。

Longine: 「あすかぶ!」について、もう少し詳しく教えてください。

: 「あすかぶ!」は、独自のアルゴリズムによって1日1つ指定される銘柄の、「あす」 の「かぶ」価の上下を予想しながら株について語り合うことのできる株コミュニティアプリです。コミュニティには、株の初心者からベテランまで幅広い個人投資家が参加しています。

コンテンツは、ニュースやタイムライン上のユーザーのコメントです。注目銘柄を選定する作業、ニュースを外部のメディアから取り込む作業は全てアルゴリズムで自動化されています。

Longine: ユーザーはどれくらいですか。

: デイリーの予想人数は、昨年11月から1万人を超えています。これは、大手ネット証券の1日当たりの取引ユーザー数に匹敵する数です。また、累計の予想数は170万を超えています。

Longine: 株だけではなく、FXも始められていますね。

: 昨年末に、FXをみんなで楽しむアプリ「かるFX」をリリースしました。まだ2か月ですが、登録ユーザーは4万人近くになっています。売り、買いのボタンは1秒に1回、誰かが押しています。ゲーム感覚でFXを楽しむことができるので、普通に中高生もやっていますよ。

ゲーミフィケーションを重視

Longine:ゲーム性を重視しているのですね。

:ゲーミフィケーションは、ユーザーエンゲージメントを高めるためにとても重要です。投資経験のない人に投資に興味を持ってもらうためには、面白くないとダメだからです。

かといって、現実のマーケットにリンクしていない単なる「株ゲーム」でもダメです。株式投資が持つ本来の面白さが、そこからは伝わらないからです。“養殖うなぎ”ではなくて “天然うなぎ”でなければなりません。

株式会社Finatext 林良太 代表取締役

株式会社Finatext 林良太 代表取締役

スピード経営 × ユーザーコミュニティへのコミットメント

Longine:ゲーム性に着目したこと以外に、ここまでサービスを伸ばせた要因は何ですか。

:まずはスピードと若さですね。現在の社員の平均年齢は25歳です。社内でデザインとコーディングを一体でやっていますので、ユーザーのフィードバックを瞬時にサービスに反映させることができます。

もう1つは、結構泥臭くて地道な作業ですが、ユーザーの生の声を聞きサービスに反映するユーザーコミュニティのマネジメントです。「あすかぶ!」では、次々と自然発生的にユーザーによる「オフ会」が各地で開催されていますが、そうした会合に私達が参加することもあります。

投信分野にも参入

Longine: 株、FXに続き、投信についても2015年12月に三菱東京UFJ銀行と投資信託選びをサポートするスマートフォンアプリ「Fundect」をリリースしていますね。

: 弊社は、2015年6月に行われた三菱東京UFJ銀行主催の「Fintech Challenge 2015」で、事業支援賞をいただき、その時のアイデアをベースに開発しました。

「Fundect」では、アプリ上で出題された15の質問に答えるだけでリスクに対する考え方を確認できる「適性チェック」機能を搭載しています。そしてそのユーザーの適性に合う投資信託がリスト形式で表示され、自分に合った投資信託を手軽に探すことができます。

また、投資信託に関する“口コミ情報”や、投信の基本が学べる“スクール”もこのアプリには含まれています。

ロボアドバイザーは投信銘柄選びのための導線にすぎない

Longine:今話題になっている“ロボアドバイザー”を取り込んだ投資初心者向けアプリということですね。

:はい。とはいえ、“ロボアドバイザー”そのものには、あまり付加価値ないと思っています。

マクドナルドに例えれば、店頭でロボアドバイザーが「昨日の夕飯はなんでしたか?」と聞き、「脂っぽいモノ」と答えたら、「では、あっさりしたベーコンレタスバーガーにしましょう」と選んでくれるとします。

すると「では、それにしよう」となります。しかし、そのためにロボアドバイザーに「手数料」を払う人はあまりいないと思います。あくまでベーコンレタスバーガーの売上を上げることで収益を上げることになりますね。

Longine: あくまでも、導入や促進に過ぎないということですね。

: はい。ですから、質問に答えていただいて、ユーザーの適性に合った投資信託のリストは出しますが、そこからフィーを取ろうとは考えていません。

コミュニティアプリの運営ノウハウが差別化ポイント

Longine: 株やFXと違って、投資信託は毎日取引するものではないですよね。

: そこが課題です。ゲーミフィケーション機能を取り込んだり、これまで培ってきたモバイルでのコミュニティアプリ運営力を生かしたいと思います。

多くの企業が頑張ってロボアドバイザーの波に乗ろうとしていますが、結局はどんぐりの背比べになると思います。そうなったときに何が差別化になるかというと、ヒューマンタッチというか、繋がりというか、つまり、コミュニティアプリ運営ノウハウがとても重要になると思います。この部分は、なかなか他社が簡単に私たちのマネをすることが難しいでしょう。

Longine: そこが差別化ポイント、参入障壁ということですね。

モバイル金融に集中しナンバーワンを狙える分野で戦う

Longine: 今後の成長戦略を教えてください。

: 基本的にはモバイル金融サービスに特化していく方針です。

今後、おそらくPCを持っていない方の割合が、どんどん多くなっていくと思います。開発リソースは、基本的にはモバイルアプリに集中して攻めていきたいと思います。近い将来にはスマホによる「ながら金融」という世の中になるのではないでしょうか。そのときに圧倒的な強みを持つ立ち位置にいたいと考えています。

分野として興味があるのは、保険、不動産などです。いずれもナンバーワンになれるかが参入するかどうかの決め手となります。

Longine: マネタイズの考え方についても教えてください。

: 口座開設に関連する“送客”と“広告”です。将来的には他のマネタイズ方法も考えておりますが、いずれにせよ、カテゴリーでナンバーワンになれるところを狙います。

Longine: 最後に、FIBCに登壇されて何か変りましたか。

: 自分にとって非常によい経験でした。私はプレゼンテーションは得意な方ではなかったのですが、FIBC以降、全く緊張しなくなり、自信を持ってできるようになりました。

Longine: 今日はどうもありがとうございました。

: こちらこそ、どうもありがとうございました。