Interview

エンタメ系フィンテックのSMILABLE「アイムイン」はヒトとヒトの共感を決済システムで結ぶーISID特別賞受賞

SMILABLE株式会社 代表取締役兼CEO 澁谷洋介 × Longine FinTech取材班

今回はSMILABLE株式会社 澁谷洋介 (シブヤ ヨウスケ)代表取締役兼CEOに、同社の事業の戦略とフィンテックに対する想いを伺いました。

読者に伝えたい3つのポイント

SMILABLE(スマイラブル)の「アイムイン」は、エンタメ系フィンテックを目指しています。

「アイムイン」はスマホで素早く簡単にできる個人間の少額決済サービスです。スマホで手軽かつ迅速(最短1分)に飲み会や誕生日祝いなどの企画を作成し、友人にSNSでシェアして、友人からクレジットカードによるオンラインペイメントで集金できるという仕組みです。従来は手間のかかった集金を、キャッシュレスかつ自由なタイミング(事前集金、その場で集金、事後集金)で手軽に行えることが特長です。

SMILABLEはこのサービスで、多くのユーザーがそれぞれ人と人をつないで自己実現をする喜びを感じていただきたいと思っています。しかもユーザーにとって低コストで利用できるように、ビジネスモデルの工夫を施していきます。

SMILABLEの起業まで

Longine FinTech取材班(以下、Longine):まず澁谷さんのバックグランドとSMILABLE創業までの経緯を教えてください。

SMILABLE 澁谷洋介 代表取締役兼CEO(以下、澁谷):もともと私はテクノミュージックを作ることに没頭していた時期があり、その過程でコンピュータに関するさまざまな技術を身に着けていきました。2004年頃ウェブを活用したマーケティングに可能性を感じ、外資系広告代理店のオグルヴィ・アンド・メイザーに入社しました。ここではさまざまなグローバル企業のオンラインマーケティングのお手伝いをさせてもらいました。

Longine:音楽からオンラインマーケティングというと随分ギャップもある気がします。

澁谷:一見異なるジャンルに思われるかもしれませんが、実はテクノロジーを使って多くの方に楽しんでもらうという意味で共通点が多いと考えています。

その後、事業者側からもオンラインマーケティングにかかわりたいと考え、テーラーメイド ゴルフでECマネージャーを務め、2014年2月に起業すると決めました。

起業はずっと考えていました。特に自分が欲しいと思うのに海外にあって日本ではまだ、というサービスに目をつけていました。その中で、個人間の決済というのが一番可能性のあるビジネスだと確信を持ったのです。

「アイムイン」の目指すもの

Longine:起業の想いはどういうものですか。

澁谷:「アイムイン」と名付けた、個人間の少額決済をスマホで簡単にできるサービスを始めようと思いました。ここには2つの狙いがあります。

その1つは、友人と気軽に飲み会やお祝いなどの企画を楽しむには、従来幹事を煩わせがちな集金・清算を楽しく効率的にするべきではないか、そうなれば楽しいことがもっと増えて、いままでよりも毎日がワクワクしたものになるにちがいない、という思いです。

もう1つは、ローカライゼーションです。海外にも同じような発想のサービスがありますが、私のこれまでのオンラインマーケティングの経験に照らすと、これらのものを日本に単純に移植するだけではうまく行かないことが多いと思います。ローカルマーケットのニーズをどれだけ取り込むのかがカギになると判断しました。そして、そこに自身の経験を役立てることができるのではと思いました。そこで、徹底的にエンドユーザーの声に耳を傾けました。

Longine:「アイムイン」の仕組みを教えてください。

澁谷:「アイムイン(I’m in.)」というのは「参加するよ」という意味です。個人間の少額決済をスマホで素早く簡単にできるサービスで、「日々の飲み会、年に1度の同窓会、友人とのBBQ、趣味のスポーツのユニフォームづくり、誕生日プレゼントなどの「会費や費用の集金が手軽にできるようになります。

例えば、友人とお金を出し合って誕生日プレゼントを贈る時に「アイムイン」でプレゼント代を集めるケースを考えてみましょう。
まず、リーダーや幹事の方が「アイムイン」で目標額や募集期間を入力して企画を作成し、それをSNSで友人にシェアします。ここまで最短1分でできます。次に、それを見て参加したい!協力したい!と思った友人はクレジットカードで費用を支払います。最後に、集まったお金は取りまとめられ幹事の方の銀行口座へ振り込まれて、そのお金で誕生日プレゼントが購入できるという流れになります。

このようなギフト購入の用途では、事前集金により幹事の立て替え払いが不要になったり、シェアで多くの人に拡散されバズ効果で予定より多くのお金が集まったり、オンラインペイメントなので遠方や深夜でもいつでもどこでも支払いができたりと、多くのメリットがあります。

他にも「アイムイン」の活用シーンはたくさんあります。お花見などのパーティーでは、会場でその場でシェアしてキャッシュレスかつリアルタイムに参加者から集金することに活用いただけます。また、日々の飲み会でも幹事さんが一旦立て替え払いをして、後日に「アイムイン
で飲み会費用を集金することで、ワリカンや傾斜を付けた支払いをその場でバタバタと行う必要がなくなり、手間や時間を節約する活用法もあります。

Longine:手ごたえはどのような場面で感じたのですか。

澁谷:屋形船を貸し切ったお花見を「アイムイン」で企画し、うまく行った時に感じました。1人8,640円で合計50人くらいのイベントです。平日夜の開催で、参加者は船の出るぎりぎりの時間に集まってきます。

従来のやり方ですと、幹事さんは「代金受け取り確認用のチェックシート」や「大量の小銭のお釣り」を事前に用意して慌ただしく現金で集金するか、あるいは一旦立て替えておいて後から集金となります。しかしこれだと約40万円の高額な立て替えになってしまいますし、全員からもれなく回収できるかどうかも分かりません。酔いのまわった参加者から集金をするため幹事さん自身がなかなか楽しむこともできません。

そのときは、「アイムイン」を利用して予め参加者が支払いを済ませていたので、当日は集めておいたお金を銀行から引き出してそのまま船頭さんに渡すだけでした。幹事さんも船頭さんもどちらも大変楽でしたね。

しかも、参加者の方は予めお金を払っていますから参加意識が高くなります。副次的ではありますが、欠席者がいなかったという効果もあって、とてもよかったと思いました。

SMILABLE株式会社 澁谷洋介 代表取締役兼CEO
SMILABLE株式会社 澁谷洋介 代表取締役兼CEO

「アイムイン」のビジネスモデルの方向性

Longine:ユーザーに対するベネフィットは分かりました。では御社のビジネスとしてどう成立させていくのでしょうか。

澁谷:米国の個人間の少額決済サービスの月間取扱金額は急速に伸びており、日本でも確実にニーズがあると思います。問題は手数料です。オープンベータを提供する中での私たちの調査では「できる限り低く」という結果が出ています。

Longine:ビジネスモデルに工夫が要りますね。

澁谷:そうですね。たとえば「アイムイン」をメディア化するという発想で解決策を探れないか検討しています。

一つは、企業様に「アイムイン」へ広告出稿いただくという発想です。「アイムイン」ではユーザーが色々な企画を立てて集まったお金で商品購入をするケースが多く見られます。具体的には、誕生日や出産祝いなどでのギフトの購入、お花見やバーベキューなどでの食材の購入、チームスポーツや趣味やキャンプなどでの用具の購入などです。そこで、企業様には「アイムイン」ユーザーに対して自社商品をアピールしていただく価値があると考えています。さらに、広告をより積極的なものにした「タイアップ・アド
も展開できるようにしていきたいと考えています。

さらに一歩進んで、企業様の側から自社商品・サービスを利用してもらうための企画(アイデア)を「アイムイン」ユーザーに提案できる場を提供したいと考えています。これを「アイデア・モール」と名付けてビジネスモデル化していきたいと思っています。

今回FIBC2016でISID特別賞をいただいたのですが、その打ち上げで「ビールかけ」をしました。せっかくの機会ですので、テレビで見たことのある、あの「ビールかけ」でお祝いしよう!とアイデアを思いつきました。しかし、実際にできる場所は少なくてお店探しに苦労しましたし、持ち物の確認などにも手間を取られ、実施するのは思っていたよりも大変でした。このようなお店を「アイデア・モール」に掲載させていただき、「アイムイン」で集客のお手伝いができればと考えています。これによって、ユーザーは楽しい企画を考える時のアイデア探しが簡単になりますし、そのようなお客様を探している企業様は集客手段として活用いただけます。

このように、ビジネスモデルはユーザーと企業を結び付けるなど柔軟な発想でキャッシュポイントを作りたいと考えています。

大切なことはあくまで自己実現プラットフォームであること

Longine:世間で言われるフィンテックとはずいぶん異なるイメージですね。

澁谷:はい。私たちはこの点を大切に考えています。私たちのサービスは、集金手段・募集ページ作成手段・チケット販売手段・イベント管理手段のいずれでもありません。確かにそういった機能を持っていますが、あくまでも企画やアイデアの実現のために必要な機能にすぎません。企画やアイデアを実現することで、人生をより楽しむためのプラットフォームが「アイムイン」だと思っています。

つまり、企画やアイデアを実現させ、友人や仲間とその体験を共有し楽しむことが大切です。ついつい集めた金額の大きさが取り上げられがちですが、そうではありません。この「アイムイン」というサービスの本質は、お金の動きや金額の大小ではなく、「どういった目的のためにお金が使われるのか?」をよく考え、ギフトではお祝いしたいという「思いが形になる」ということ、イベントでは「記憶に残る感動が生まれる」ということが想像できるかが重要だと考えています。さらに、企画や参加者の数だけ笑顔が生まれているということが理解できるかだと思います。このことから、すべてのユーザーがそれぞれ気持ちよく自己実現できるプラットフォームになることが大変重要だと感じています。

一方で、お金を扱わせていただくフィンテックである以上、セキュリティやコンプライアンスに関して万全の対策が必要となってくることは言うまでもありません。

Longine:2016年はどんな1年になるのでしょうか。

澁谷:サービスの骨格が見えてきましたから、2016年はアプリ化を進め、決済手段をクレジットカードだけでなくさまざまなものへ多様化させていきます。そして、サービス拡大のため会社も成長していきたいと思います。現在、ユーザー目線を持ってサービスとともに成長していただけるエンジニアやデザイナーを募集しています。また、投資や協業いただける方、広告を出稿されたい企業様も募集していますので、弊社ホームページのお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。

その他にも色々な展開を模索していますので、いずれお話する機会があればと思います。

Longine:FIBC2016に参加されISID特別賞を受賞されました。

澁谷:ありがとうございます。賞をいただいて本当にうれしいです。フィンテックとくくられるスタートアップのなかで、私たちがユーザーの自己実現や楽しさを重視したユニークな企業であることを広く知ってもらう良い機会になりました。

Longine:本日はどうもありがとうございました。

澁谷:こちらこそ、どうもありがとうございました。